天を仰いで
天を仰いで C)加茂花菖蒲園
天を仰いでは、加茂花菖蒲園が改良して作ったガクアジサイの品種です。
まさに天を仰ぐような姿をした天を仰いでは、
どのような特徴を持ったアジサイなのでしょうか。
[天を仰いで]
■天を仰いでの特徴
◎風変りでユニークな花形
天を仰いでは、両性花が中央に固まって咲き、
その周りを囲むように装飾花が咲くガク咲きタイプのアジサイです。
花房全体はそれほど大きくなく、ヤマアジサイのような野性味の溢れる姿です。
両性花の数は多くなく、粒も小さい上に花弁も発達していないため、
開花してもしべだけが目立ちます。
しべだけが目立つといっても、ふわふわとした小さな塊があるようで、
それはそれで可愛らしく見えます。
天を仰いでは、両性花と同じくらい装飾花も少ない品種です。
そのため、本当に花房だけを見ていると、ヤマアジサイと勘違いしそうなほどです。
装飾花は花弁が4枚の一重咲きで、丸っこい花びらがかわいらしさを増しています。
4枚の花びらのうち、3枚は同じくらいの大きさをしていますが、
1枚だけ他よりも少し大きめなのが特徴です。
すべての花弁が均等な大きさをしているよりも動きが出て、
花弁数の少ない一重咲きにも関わらず、ユニークさがあります。
さらに花によって、花弁の縁に小さな切れ込みが入ることがあります。
この切れ込みは決まったパターンでは出ず、ランダムに出るので、
次に咲く花がどのような姿になるのかという楽しみも生まれます。
また、装飾花は開花すると、珍しいほどの平咲きとなり、天を仰ぐ姿となります。
◎技ありの覆輪
天を仰いでは、土の酸度によって花色が変わる品種です。
酸性なら紫、アルカリ性ならピンク色になります。
どの色になっても美しく、色が明るすぎないので、子供っぽくなりません。
装飾花の花弁全体がキレイに色づき、
花数も花のボリュームもそれほどないにも関わらず、
大人っぽいシックな雰囲気が漂います。
両性花は装飾花と同じ色に染まるので、花房全体のまとまりも良いです。
天を仰いでが美しく見える秘密は、
なにより装飾花の花弁の縁にある、ごく細い覆輪にあります。
覆輪はとても細く、近くで見ないと分からないくらいなこともあります。
けれどこの覆輪があることで、少ない花弁がくっきりと浮きたちます。
平咲きになるタイプの品種ということもあり、上から見た姿はとてもキレイです。
ただ、覆輪の発現は安定していません。
同じ環境下で育てていても、覆輪が出る花と出ない花とに分かれます。
同じ株の同じ花房であっても、覆輪のあるなしが出る場合がありますが、
それはそれで楽しみの1つとなり、すべてが同じでない方が、見ていて飽きません。
◎ヤマアジサイ風でもガクアジサイ
花房だけを見ていると、造りがシンプルで雰囲気も楚々としているため、
ヤマアジサイのように見えます。
けれど、株全体を見ると、意外とがっしりとした体格をしているのが分かります。
株姿でいえば、ヤマアジサイよりもガクアジサイに近く、
枝もしっかりとしていて折れる心配はありません。
ただ、生長してきた時に枝が長く伸びすぎていると、
風によって倒れてくる可能性があります。
その場合は、剪定によって枝の長さを調節するか、
支柱によって枝を支えてあげると良いでしょう。
葉も大きく色が濃いので、野性味のある花を引き立ててくれます。
■天を仰いでの育て方のポイント
基本の育て方は、一般のアジサイと同じです。
花色は土の酸度によって変わるため、毎年同じ花色で咲かせたい場合は、
土の酸度を調整する必要があります。
青を含んだ紫なら酸性、紫色なら中性、ピンクならアルカリ性に整えます。
購入した時の花が何色であっても、
その後の酸度調整によって花色を変えることができます。
天を仰いでは、ガク咲きタイプの品種で、中央の両性花も開花します。
開花初期の頃であれば、両性花が蕾か開花したてなので、
とてもキレイな姿を見ることができます。
ところが開花が進んでくると、両性花がしだいに花粉で汚れたようになってきます。
そのため、開花初期が最も美しい状態の品種となっています。
■参考
・アジサイ 庭植えの育て方
・アジサイ 鉢植えの育て方
・アジサイ 挿し木の仕方